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国登録有形文化財旧飯田家住居改修計画(第Ⅰ期)

設計
斎藤信吾建築設計事務所
所在地
東京都
用途
住居
構造
W
規模
地上2
状況
竣工
竣工
2024/03/31

本計画は、東京都中央区佃島に位置する国登録有形文化財「旧飯田家住宅」の第一期改修プロジェクトです。隅田川河口に位置する佃島は、住吉神社の例大祭に代表される江戸以来の漁師町の文化と町並みを今に伝える一方で、東京湾岸のタワーマンション群を遠景に望む、歴史と現代が重層する特異な地域です。本プロジェクトは、この場所に固有の生活文化を未来へ継承することを目的としています。

旧飯田家住宅は、魚問屋を生業としていた築100年を超える出桁造町屋であり、日常時には商いの場として、祭礼時には神輿の御仮屋として機能してきました。本計画では、こうした二重の性格をもつ町屋の歴史的価値に着目し、「復元」ではなく「復原」という考え方のもと、過去の一時点に戻すのではなく、営みの蓄積そのものを読み解きながら再生を行いました。

設計においては、既存の構造や素材を最大限に活かしつつ、現代的な利用に応答するための最小限の介入を行っています。とりわけ、建築を一度リセットするのではなく、使い続けながら段階的に手を加えていく「継続する改修」というプロセスを重視し、時間の積層を設計に取り込んでいます。この考え方は、歴史的建築を固定された保存対象ではなく、更新され続ける生活の場として捉え直す試みでもあります。

外観においては、魚問屋としての佇まいを継承することを重視しました。既存を丁寧に読み取りながら、必要な改修部分についても佃島の景観に調和する素材や色彩を採用しています。手押しポンプの残る土間や、人見梁を有する開口部、可動式の敷居といった特徴的な要素を活かし、かつての商いの風景を現代に引き継いでいます。とりわけ劣化の進んでいた建具については慎重に更新を行い、町屋の「顔」としてのファサードを保存しました。

内部空間では、建具を中心とした改修を行い、既存の素材や色調に寄り添うかたちで空間を再構成しています。新たに加える要素は、既存と対立するのではなく、その時間的厚みを引き立てる存在として位置付けられています。

また本プロジェクトは、クラウドファンディングサービス「READYFOR」を活用し、資金調達の段階からクライアントとともに構想を共有しながら進められました。社会に開かれたかたちで支援を募り、多くの共感を得ながら改修を実現した点も、本計画の大きな特徴です。

旧飯田家住宅の改修は、単なる建物の保存にとどまらず、佃島に息づく生活文化そのものを未来へと接続する試みです。東京ウォーターフロントの変化の中にあって、400年続く江戸漁師町の風景を継承し、新たな価値として再提示することを目指しています。

#改修, #保存, #国登録有形文化財

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